「毛穴洗浄メニューを新しく導入したいけど、料金はいくらにすれば…?」「周りのサロンがどんどん安くしているから、うちも追随しないとお客様が来てくれないかも…」「毎日予約でいっぱいなのに、月末になると利益がほとんど残らない」
サロン経営における「価格設定」は、集客や売上に直結する、最も神経をすり減らす悩みの一つです。特に、ハイドラフェイシャルなどの人気機器が登場し、多くのサロンが導入している「毛穴洗浄」は、お客様からの比較も厳しく、安易な価格競争に陥りやすい危険なメニューでもあります。
しかし、ここで断言します。競合の価格に怯え、自サロンの価値を正しく計算せずに決めた価格は、あなたの技術、時間、そして情熱を不当に安売りし、サロンの未来を確実に蝕んでいきます。
この記事は、そんな価格設定の呪縛からあなたを解放するための「完全保存版マニュアル」です。感覚や勘に頼るのではなく、データと戦略に基づいて「粗利」を断固として守り抜き、お客様からも納得して選ばれる価格を設定するための、具体的な実務手順のすべてを公開します。この記事を最後まで読み終えた時、あなたは価格への不安から解放され、自信と誇りを持って自サロンの価値を提示できるようになるでしょう。

【第一歩】価格を決める前に、自サロンの「原価」を知る
価格設定の議論は、1回の施術にかかる「コスト(原価)」を1円単位で正確に把握することから始まります。これが、あなたのサロンが赤字にならないための“最低防衛ライン”です。
1. 変動費:お客様一人あたりにかかるコスト
お客様が一人増えるごとに、それに伴って発生する費用です。細かくリストアップしましょう。
- 消耗品費
クレンジング剤、美容液(ハイドラ等の専用液)、パック剤、精製水、コットン、スポンジ、使い捨てシーツ、スリッパなど - リネン代
タオルやガウンのクリーニング費用 - 水道光熱費の一部
施術時間に応じて変動する電気代や水道代 - 販売手数料
予約サイト経由の場合の成果報酬手数料など
これらを合計し、例えば「お客様一人あたり500円」といった形で算出します。
2. 固定費:サロンを維持するための月々のコスト
お客様の数に関わらず、毎月必ず発生する費用です。
- 家賃
テナント料や、自宅サロンの場合の家事按分した家賃 - 人件費
あなた自身の役員報酬やスタッフの給与 - 水道光熱費・通信費
基本料金など - 広告宣伝費
チラシ作成、ウェブ広告、予約サイトの月額掲載料など - リース・ローン代
美容機器のリース料や、開業時の借入金返済 - その他
税理士報酬、保険料、システムの月額利用料など
3. あなたの「1時間あたりのコスト」を算出する
固定費と変動費を基に、あなたが施術する「1時間」の値段を計算します。これが値付けの土台です。
計算ステップ
- 月の総固定費を計算
(例)30万円 - 月の総営業時間を計算
(例)8時間/日 × 20日営業 = 160時間 - 1時間あたりの固定費を計算
30万円 ÷ 160時間 = 1,875円 - 60分の施術にかかる総原価を計算
時間あたり固定費(1,875円)+ 1人あたり変動費(500円)= 2,375円
この例の場合、60分の毛穴洗浄メニューの価格を2,375円以下に設定した瞬間、あなたは働けば働くほど赤字になる、ということが分かります。
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【戦略立案】自サロンに最適な価格設定アプローチを選ぶ
原価という土台が固まったら、次に市場の中でどのような価格ポジションを取るのか、戦略を決定します。
戦略1:コストプラス法(原価積み上げ式)
算出した原価に、確保したい利益(粗利)を上乗せする、最もシンプルで基本的な方法です。
(例)原価2,375円 + 確保したい利益7,625円 = 価格10,000円
利益を確実に確保できる反面、市場の相場からかけ離れすぎるとお客様に選ばれないリスクがあります。全ての基本となる考え方です。
戦略2:市場追随法(競合参考式)
あなたのサロンと同じエリア、同じターゲット層の競合サロンの価格を調査し、それを基準に自サロンの価格を決定する方法です。
(例)近隣サロンの相場が8,000円〜12,000円 → 自サロンは中間点の10,000円に設定。
お客様に安心感を与えやすいですが、独自性を失い、安易な価格競争に陥りやすいデメリットもあります。相場を知ることは重要ですが、それに囚われすぎてはいけません。
戦略3:価値基準法(付加価値反映式)
個人サロンや、差別化を目指すサロンが最も目指すべき戦略です。原価や相場だけでなく、あなたのサロンでしか提供できない「独自の価値」を価格に反映させます。
- 技術的価値
毛穴洗浄だけでなく、デコルテマッサージやヘッドマッサージも組み合わせる - 専門知識的価値
肌診断機を用いた詳細なカウンセリングで、毛穴詰まりの根本原因まで解明し、生活習慣のアドバイスまで行う - 環境的価値
完全個室のプライベート空間、こだわりのアロマや音楽、上質なアフタードリンクなど
これらの付加価値がお客様に伝われば、相場より高い価格でも「このサロンだから、この価格を払う価値がある」と納得していただけます。
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【メニュー設計】顧客心理を掴み、客単価も上げる値付けの実務
価格戦略が決まったら、お客様が選びやすく、かつサロンの利益も最大化できるメニューに落とし込みます。
1. 「松竹梅」の法則で、売りたいメニューに誘導する
メニューを3段階の価格帯で用意すると、多くのお客様が真ん中の「竹」を選ぶ傾向があります。これを利用し、サロンとして最も利益が出て、かつお客様の満足度も高いメニューを「竹」に設定します。
- 梅(エントリープラン)
毛穴洗浄のみ(60分)/ 8,000円
→ まずは試したい、という新規顧客向けのハードルが低いプラン。 - 竹(本命プラン)
毛穴洗浄+鎮静パック+デコルテマッサージ(90分)/ 12,000円
→ サロンの強みであるマッサージも体験でき、満足度が最も高い。梅プランとの価値の差を明確にすることで、こちらを選んでもらいやすくする。 - 松(プレミアムプラン)
毛穴洗浄+高濃度ビタミンC導入+ヘッド&デコルテマッサージ(120分)/ 18,000円
→ 毛穴だけでなく、美白やリフトアップなど、トータルでの肌質改善を目指す方向け。竹プランをお得に見せる効果もある。
2. 新規集客の鍵「初回体験価格」の賢い設定法
初回体験価格は、新規のお客様に来店してもらうための強力なフックですが、設定を誤ると「初回荒らし」の温床となり、利益を圧迫します。
- 割引率は20%〜30%OFFが上限
半額などの過度な割引は、正規価格への移行を困難にします。 - 「なぜ安いのか」を明確に伝える
「当サロンの技術を、まずは一度ご体感いただきたく…」と、安さの理由をきちんと説明することで、価値の低下を防ぎます。
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【完全保存版】毛穴洗浄メニュー値付け実務チェックリスト
□ 1施術あたりの変動費を1円単位で計算したか?
□ サロンの月間固定費を全てリストアップしたか?
□ あなたの「1時間あたりのコスト」を算出したか?
□ 商圏内の競合サロンの価格とサービス内容を3店舗以上調査したか?
□ 自サロンが提供できる「独自の価値」を言語化できるか?
□ 価格戦略(コスト/市場/価値)の軸を決定したか?
□ 「松竹梅」の3つのプランを用意できているか?
□ 初回体験価格の割引率は、30%以内か?
□ オプションメニューで客単価を上げる仕組みは考えたか?
□ 価格に見合う価値があることを、カウンセリングで伝えられるか?
まとめ:価格とは、あなたの“覚悟”の表れである
毛穴洗浄の価格設定は、単なる数字合わせの作業ではありません。それは、「私は、これだけの価値を提供します」という、お客様への約束であり、プロとしての覚悟の表明です。
自サロンのコストと価値から目をそらし、ただ周りに合わせて価格を決めるのは、その覚悟を放棄する行為に他なりません。それでは、お客様の心は掴めず、サロン経営は疲弊の一途を辿るでしょう。
このマニュアルを参考に、あなたの技術、知識、そして情熱に見合う、正当で、誇りを持てる価格を設定してください。その自信に満ちた姿勢こそが、お客様からの信頼を勝ち取り、価格競争の泥沼から抜け出すための、最も確かな一歩となるのです。
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