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フェイシャルエステ禁忌事項の判断基準|一覧と対応マニュアル

サロンにいらっしゃったお客様。カウンセリングシートを見ると、健康状態のチェック項目にいくつか「はい」が付いている。しかし、ご本人に尋ねると「ああ、これくらい大丈夫よ」と笑顔で返された…。

経験の浅いエステティシャンはもちろん、ベテランであっても、このような場面で判断に迷った経験は一度や二度ではないはずです。お客様のご希望に応えたい一心で、つい施術に入ってしまった結果、肌トラブルを悪化させてしまったり、お客様の持病に思わぬ影響を与えてしまったり…。そんな事態は、絶対に避けなければなりません。

フェイシャルエステにおける「禁忌事項」の確認は、単なる事務的な手続きではありません。それは、お客様の大切な身体と健康を守り、ひいてはサロン自身の信頼と経営を守るための、最も重要な生命線です。この判断基準が曖昧なままでは、どれだけ高い技術を持っていても、プロフェッショナルとは言えません。

本記事では、新人エステティシャンからオーナーまで、すべてのサロン関係者が知っておくべきフェイシャルエステの禁忌事項を網羅的にリストアップ。さらに、判断に迷うグレーゾーンの見極め方から、万が一該当した場合のスマートな対応方法までを、具体的な「対応マニュアル」として徹底解説します。この記事を最後まで読めば、禁忌事項に対するあなたの判断基準が明確になり、自信を持ってお客様と向き合えるようになるはずです。

フェイシャルエステの禁忌事項について考えている女性
目次

そもそも「禁忌事項」とは? – 絶対的禁忌と相対的禁忌

禁忌事項とは、特定の施術を行うことで、お客様の健康状態に悪影響を及ぼす可能性のある症状や状態、病歴などを指します。これらは大きく2種類に分類されます。

  • 絶対的禁忌
    いかなる場合でも施術を避けるべきもの。施術を行うことで、症状の悪化や深刻な健康被害を引き起こすリスクが非常に高い状態です。
  • 相対的禁忌
    状態や部位、医師の許可など、条件付きで施術が可能になるもの。注意深く観察しながら、施術範囲を限定したり、特定の機器の使用を避けたりといった配慮が求められます。

この2つの違いを正しく理解し、適切に判断することが、プロとしての第一歩です。

【保存版】フェイシャルエステ禁忌事項一覧リスト

ここでは、一般的なフェイシャルエステにおける禁忌事項を網羅的にリストアップします。サロンのカウンセリングシートを作成・見直しする際の参考にしてください。

絶対的禁忌事項(原則として施術はできません)

皮膚に関する項目

  • 感染症を伴う皮膚疾患(単純ヘルペス、白癬菌、とびひ、ウイルス性のイボなど)
  • 重度に化膿・炎症しているニキビやアトピー性皮膚炎の部位
  • 皮膚がん、またはその疑いがある部位
  • 開放性の傷、出血している部位
  • ケロイド体質(程度によるが、原則として慎重になるべき)

健康状態に関する項目

  • 37.5度以上の発熱がある
  • 重度の高血圧、心臓疾患、腎臓疾患、肝臓疾患
  • 悪性腫瘍(がん)の治療中、またはその疑いがある
  • てんかんの既往歴がある
  • 血栓症、静脈瘤の症状が重い
  • 感染症(インフルエンザ、ノロウイルス、結核など)に罹患している
  • 免疫不全に関わる疾患を持っている
  • 予防接種を24時間以内に受けた
  • 飲酒後でアルコールが体内に残っている状態

相対的禁忌事項(施術には注意・確認が必要です)

皮膚に関する項目

  • 過度な日焼けの直後(皮膚内部で炎症が起きているため)
  • 軽度のアトピー性皮膚炎、アレルギー症状が出ている
  • 皮膚科に通院中、または薬(ステロイドなど)を塗布している
  • 美容医療(レーザー、光治療、ボトックス、ヒアルロン酸注入、ケミカルピーリングなど)の施術を最近受けた

健康状態に関する項目

  • 妊娠中、またはその可能性がある(特に安定期に入るまで)
  • 授乳中(ホルモンバランスが不安定で肌トラブルが起きやすい)
  • コントロールされている軽度の高血圧、糖尿病、甲状腺機能障害
  • 生理中(肌が敏感になり、痛みを感じやすい)
  • 体内に金属(ペースメーカー、ボルトなど)が入っている(※機器の使用に制限あり)
  • 現在、薬を服用している(※特に抗生物質や精神安定剤など、光過敏性を引き起こす可能性のある薬)
  • 歯科矯正中(※機器の使用に制限あり)

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グレーゾーンの判断基準とカウンセリングでの確認術

リストを見ても判断に迷う「グレーゾーン」こそ、エステティシャンの真価が問われる場面です。お客様とサロン、双方を守るための具体的なヒアリング方法を学びましょう。

カウンセリングシートが命綱

カウンセリングシートは、単なる形式的な書類ではありません。法的な観点からもサロンを守る重要な証拠(エビデンス)となります。上記の禁忌事項リストを基に、詳細なチェック項目を作成し、必ずお客様自身に記入していただき、最後に日付と署名をもらいましょう。

「はい」の項目を深掘りする質問術

チェック項目に「はい」が付いていたら、そこからがカウンセリングの本番です。お客様の「大丈夫」を鵜呑みにせず、プロとして具体的な状況をヒアリングします。

  • (皮膚科に通院中の方へ)
    「現在、皮膚科に通院されているとのことですが、差し支えなければ、どのような症状で、どのような治療をされていますか?お薬を塗られている場合、そのお薬の名前や種類はお分かりになりますでしょうか?」
  • (妊娠中の方へ)
    「ご懐妊おめでとうございます。体調はいかがですか?念のため、かかりつけのお医者様に、フェイシャルエステを受けても問題ないかご確認いただくことは可能でしょうか?」
  • (美容医療を受けた方へ)
    「〇〇の施術を受けられたのですね。いつ頃、どちらのクリニックで受けられましたか?施術後のダウンタイムや、クリニックからの注意事項などはございましたか?」

このように、オープンクエスチョンで丁寧にヒアリングすることで、お客様も答えやすくなり、より正確な情報を得ることができます。これは、お客様一人ひとりに合わせた最適な施術プランを立てる上でも不可欠です。

判断に迷った時の絶対原則

どれだけヒアリングを重ねても、最終的な判断に迷うことはあります。その時は、以下の原則に立ち返ってください。

「少しでもリスクがあると感じたら、施術は行わない」

これは、エステティシャンが持つべき最も重要な職業倫理です。「売上を逃したくない」という気持ちは分かりますが、万が一のトラブルが起きた場合、失うものは売上どころではありません。サロンの信頼、評判、そしてお客様の健康…そのすべてを失う可能性があるのです。施術を断ることは、逃げではなく「プロとしての責任ある判断」です。

【ケース別】禁忌事項に該当した場合のスマート対応マニュアル

施術をお断りすることは、お客様をがっかりさせてしまう可能性があります。しかし、伝え方一つで、そのマイナスの印象をプラスに変え、未来の優良顧客へとつなげることができます。

ケース1:当日の施術が難しいと判断した場合

ただ「できません」と突き放すのは最悪の対応です。誠意と代替案を示しましょう。

対応トーク例
「本日はご来店いただき、誠にありがとうございます。カウンセリングでお話を伺った結果、お客様のお肌(ご体調)の安全を第一に考えますと、万が一のリスクを避けるため、今日のフェイシャル施術は見送らせていただくのが最善かと存じます。大変申し訳ございません。」

【代替案の提示】

  • プランA(別メニューの提案)
    「もしよろしければ、お顔に触れないデコルテやヘッド、ハンドのマッサージでしたら、本日ご案内が可能です。血行が良くなるだけでも、お顔のくすみ改善が期待できますがいかがでしょうか?」
  • プランB(未来への約束)
    「本日は、お肌の状態をより詳しく拝見するカウンセリングに切り替えさせていただき、ご自宅でできるケア方法などをアドバイスさせていただけませんでしょうか。そして、お肌の状態が落ち着かれましたら、ぜひ最高のコンディションで施術をさせてください。その際にお使いいただける特別なご優待チケットをご用意いたします。」

ケース2:医師の確認が必要と判断した場合

お客様に確認をお願いする際は、あくまで「お客様のため」という姿勢を崩さないことが大切です。

対応トーク例
「お客様により安全に、そして安心して施術を受けていただくために、一度かかりつけのお医者様に『フェイシャルエステ(具体的な施術内容を伝える)を受けても問題ないか』をご確認いただくことは可能でしょうか。お手数をおかけして大変恐縮ですが、これも施術効果を最大限に引き出すための大切なステップですので、ご協力いただけますと幸いです。」

可能であれば、医師に確認してもらう事項をまとめた簡単な書類(同意書テンプレート)を用意しておくと、お客様の負担も減り、よりスムーズに進みます。

まとめ:禁忌事項の確認は、最高の信頼関係を築くための第一歩

フェイシャルエステの禁忌事項に関する知識と判断力は、お客様の安全を守るための「」であると同時に、サロンへの信頼を築くための「」にもなります。

「このサロンは、私のことを本当に考えてくれている」

お客様にそう感じていただけた時、単なる「施術を受ける場所」から「安心して美を任せられるパートナー」へと、サロンの価値は大きく変わります。そのためには、常に最新の医療や美容知識を学び、スタッフ全員が同じ高いレベルで判断基準を共有できる体制を整えておくことが不可欠です。今日のカウンセリングが、お客様の10年後の美しさと、サロンの10年後の繁栄につながっていることを忘れずに、一人ひとりのお客様と真摯に向き合っていきましょう。

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この記事を書いた人

エステサロン開業を目指す方のための、実践型メディア。
実際にエステサロンを開業・運営してきた経験をもとに、準備から集客、助成金活用やスタッフ教育に至るまで、リアルで役立つノウハウを発信しています。
美容業界で「自分のサロンを持ちたい」という夢を叶えたいすべての方へ、確かな知識と具体的な手順をお届けします。

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